建設業に特有の勘定科目と建設業経理士試験について

みそらくん

この記事を読むと次の内容がわかるようになるよ。

・一般会計と建設業会計の違いについて

・建設業経理検定について

経営審査の準備をしていて前期に発注者から受領した前受け金について質問をいただきました。建設業特有の未成工事受入金です。本日は建設業に特有の勘定科目についてご案内をしていきます。

建設業は着工から完成までの工事期間が長く、決算期間に収益が生じないことがあります。このような事態を避けるため、建設業では一般の会計とは異なる会計方法が定められています。これを「建設業会計」いいます。

「建設業会計」では、「建設業法施行規則」に基づいた専門的な勘定科目を用います。建設業会計には特有の知識が必要であり、建設業経理士のような専門資格が設けられています。これにより、建設業における財務の正確性と透明性が保たれています。

 

一般会計との違いについて

貸借対照表

完成工事未収入金(資産)

一般会計:売掛金

完成工事高に計上した請負金額のうち未だ回収できていないもの

 

 
未成工事支出金(資産)

一般会計:仕掛品

完成工事高に計上していない工事について支出した費用
 

 

工事未払金(負債)

一般会計:買掛金

完成工事高に計上した工事に支出した費用うち支払いが済んでいないもの
 

 

未成工事受入金(負債)

一般会計:前受金

完成工事高に計上していない請負金額のうち先に受領したしたもの

 

損益計算書

完成工事高

一般会計:売上

建設業の売上金額

 

 
完成工事原価

一般会計:売上原価

完成工事にかかった直接の費用(材料費・労務費・外注費・経費)

 【材料費】工事のために直接購入した素材、半製品、製品、材料貯蔵品等から振り替えられた材料費のことです(仮設材料の損耗額を含める)。前期末の在庫があり、事業年度内に材料を購入する必要がなかった場合は材料費は0円と記載します。

 【労務費】現場で工事に従事した直接雇用している作業員に関する賃金、給料および手当等を記載します。(人件費には作業員に対する社会保険料などの法定福利費も含みます。)建設業では工事を行う際に他社に仕事を依頼することが多いと思います。他社や個人事業主に依頼をした場合は労務費ではなく外注費に該当します。しかし、「材料や道具を自社で用意し、他社が工事のみを行う」場合や、「他社に人員不足を補うための応援を依頼」した場合、「外注先から受領した請求書の内容で経費の大部分が労務費」の場合には外注費ではなく労務費の中の「労務外注費」に分類されます。

 【外注費】外注費から労務外注費を引いた残りの額。一般的には他社の人が工事をする場合は外注費か労務外注費に含めます。外注費は「作業内容に対して」報酬が支払われます。給与の場合は時給や日給など、働く時間が決まっていてその時間に対して報酬が支払われます。外注費は時間的縛りがなく、外注先自身が就業時間を決定できます。時間的拘束を受けず、作業内容に対して報酬が支払われるものは「外注費」、時間的なしばりがある場合は「給与」と判断ができます。

 【経費】完成工事について発生し、または負担すべき経費から上記の3つの経費を引いた残りの額。
動力用水光熱費、機械等経費、設計費、労務管理費、租税公課、地代家賃、保険料、退職金、法定福利費、福利厚生費、事務用品費、通信交通費、交際費、補償費、雑費等。

賃金、給料および手当のうち、現場代理人や施工管理等、2の労務費に該当しない従業員の人件費。
このうち人件費については抜き出して「うち人件費」としても記載します。「うち人件費」には従業員給料手当、退職金、法定福利費、福利厚生費が含まれます。

 

完成工事総利益

一般会計:売上総利益

完成工事高から完成工事原価を差し引いたもの

貸借対照表の資産である、未成工事支出金に入れた支出は、決算をした期中には費用になっていません。
支出した現場を完成工事高として計上していないためです。その現場が完成工事として処理したときに、資産から損益計算書の完成工事原価に振り替えられて、費用になります。

貸借対照表の負債である、未成工事受入金に入れた収入は、決算をした期中には完成工事高にも費用にもなっていません。その現場が完成工事として処理したときに、負債から損益計算書の完成工事高と完成工事原価に振り替えられます。

収益の計算基準は、工事完成基準と工事進行基準の2つがありますが、一般的なのは工事完成基準です。
工事が完成した時をもって、売り上げと費用を計上します。完成前に受け取ったり、支払ったりしたものについては、貸借対照表の未成工事の科目に入れておいて後で処理をしています。

決算期をまたいで注文された仕事が完了することは、建設業によくあることですね。そのため上記のような勘定科目が必要となります。

 

完成工事高から除外する「兼業売上高」になる業務

どの許可行政庁でも次のような業務は工事にあたらないと定義されています。建設業種区分に該当しない金額は兼業として分ける必要があります。

保守点検、維持管理、除草、草刈、伐採、除雪、融雪剤散布、測量、地質調査、樹木の剪定、庭木の管理、造林、採石、調査目的のボーリング、施肥等の造園管理業務、造船、機械器具製造・修理、建設機械の賃貸、宅地建物取引、建売住宅の販売、浄化槽清掃、ボイラー洗浄、側溝清掃、コンサルタント、設計、リース、資材の販売、機械・資材の運搬、保守・点検・管理業務等の委託業務、物品販売、清掃など

ただし、建設工事の完成を目的とした契約に含まれる場合は、完成工事高に含めることができます。

 

建設業経理検定試験について

建設業経理士検定試験は、建設業の経理業務に必要な専門知識と処理能力の向上を目指す資格試験です。「建設業経理士検定試験」(1級と2級)は、建設業法施行規則第18条の3に基づく「登録経理試験」として実施しており、「建設業経理事務士検定試験」(3級と4級)は(一財)建設業振興基金独自の試験として実施しています。

1級と2級の検定試験に合格すると、合格日から5年を経過する日が属する年度の年度末まで、経営事項審査で「公認会計士等の数」として加点されます。この期間が過ぎた後は、「登録経理講習」を修了することで評価の対象となります。

 

試験の内容について

試験は学歴等にかかわらずどなたでも希望の級を受験することができます。なお、1級は原価計算、財務諸表、財務分析の3科目から成る科目合格制をとっており、3科目全てに合格すると1級資格者となります。同日に1級の複数科目を受験することは可能ですが、1級と別の級を同じ日に受験することはできません。

 

1級

試験内容:建設業原価計算、財務諸表、及び財務分析

上級の建設業簿記、建設業原価計算及び会計学を修得し、会社法その他会計に関する法規を理解しており、建設業の財務諸表の作成及びそれに基づく経営分析が行えること。

※1級の各科目の合格は、合格通知書の交付日から5年間有効です。

2級

試験内容:建設業の簿記、原価計算及び会社会計

実践的な建設業簿記、基礎的な建設業原価計算を修得し、決算等に関する実務を行えること。

3級

試験内容:建設業の簿記、原価計算

基礎的な建設業簿記の原理及び記帳並びに初歩的な原価計算を理解しており、決算等に関する初歩的な実務を行えること。

4級

試験内容:簿記のしくみ

初歩的な建設業簿記を理解していること。

 

令和5年度下期試験について

■申込受付期間:令和5年11月14日(火)から12月14日(木)

■申込方法:インターネット受験申込、または書面による受験申込

■受験票発送日(予定):令和6年2月15日(木)

※受験票が届かない、または紛失したときは建設業振興基金にお問合せください。再発行受付期間:令和6年2月26日(月)~ 令和6年3月8日(金)16:00まで/電話番号:03-5473-4581

■試験日:令和6年3月10日(日)

■合格発表日:令和6年5月10日(金)

■受験料(税込金額)

1級(1科目)8,120円
1級(2科目同時)11,420円
1級(3科目同時)14,720円
2級7,120円
3級5,820円
4級4,720円
2級・3級(同日受験)12,620円
3級・4級(同日受験)10,220円

 

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この記事を書いた人

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塩﨑 宏晃

2003年行政書士登録。
建設業許可・経営審査業務の実務経験19年。
行政書士業務を通じて現場で働く方の縁の下の力持ちとなることがモットーです。
近年は建設キャリアアップシステム、特定技能ビザにも取り組んでいます。
お客様は一人親方、サブコン、地方ゼネコン、上場メーカーなど様々。
毎年200社以上のお客様と直接お会いし、ご相談を承っています。
2023年から申請のオンライン化が本格スタートしますので、
これを機に遠方のお客様ともご縁を頂ければと考えております。