工事請負契約書にはいくらの印紙を貼るのか

こういう契約書なんですけど、印紙はいくらのものを貼ればいいですか?お客様からよくご質問をいただきます。今回は、この印紙代と建設業の方々にかかわるコンプライアンスについてご案内をしていきます。

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目次
印紙代について
印紙代 軽減措置について
印紙代は誰が負担するのか
過怠税とは?
請負契約書の作成義務について
著しく短い工期の禁止とは
下請け代金の適正な支払いについて
建設業許可について(一般・特定)

 

印紙代については、国税庁のホームページに掲載されている最新の印紙税額一覧表を確認するのが、正確で間違いのない方法だと思います。工事請負契約書は一覧表の2号文書にあたります。請負金額に応じて印紙税額が変わります。

※「平成26年4月1日から令和9年3月31日」までの間に作成されるものは軽減措置の対象となります。

参考 国税庁の印紙税についてのホームページはこちら

 

軽減措置について

軽減措置の対象となる契約書は「請負に関する契約書(建設工事の請負にかかる契約に基づき作成されたものに限られます。)」のうち、記載金額が100万円を超えるもので「平成26年4月1日から令和9年3月31日」までの間に作成されるものになります。これらの契約書に該当するものであれば、建設請負の当初に作成される契約書のほか、工事金額の変更や工事請負内容の追加等の際に作成される変更契約書や補充契約書等についても軽減措置の対象になります。

※契約書に記載された契約金額が1万円未満のものは非課税となります。

1万円超200万円以下 200円
200万円超300万円以下 500円
300万円超500万円以下 1,000円
500万円超1,000万円以下 5,000円
1,000万円超5,000万円以下 10,000円
5,000万円超1億円以下 30,000円(以下、省略)

請負契約書のなかで契約書の作成通数を規定していると思います。そちらで定めた通数分だけ同じ印紙代が必要になります。また印紙に押す割り印については当事者の双方がしなければならない、という決まりはありません。2度と使えなくするための消印ですので、契約の片方でもよいですし、印鑑でなくてもペンで印をするだけでも構いません。

なお、工事注文書と請書の場合には、請書のほうにだけ印紙を貼ります。請書も上記の金額をもとにしてください。

 

印紙税はどちらが負担するのでしょうか?

印紙税法第3条では、印紙税の納税義務者は課税文書の作成者となっているため、契約書を作成した側が負担することになります。 ただし共同で作成した場合は双方が印紙税を納める義務がある、と定められています。一般的に契約書は2通作成し、お互いが1通ずつ保管するため、双方がそれぞれに貼り付ける印紙代を負担するケースが多いです。協議の上決定をするようにしましょう。

 

過怠税とは?

印紙を貼らなければならない「注文請書」や「工事請負契約書」などの書面に印紙を貼り忘れてしまうと過怠税が徴収されてしまいます。過怠税の額は、納付しなかった印紙税の額に加えてその2倍に相当する金額(納付すべき金額の3倍)となります。

しかし、貼り忘れに気づいて自ら申し出た場合は納付すべき印紙税の1.1倍に軽減されます。貼り忘れがないか確認すること、そしてもし、貼り忘れていることに気づいたら申し出るようにしましょう。

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請負契約書の作成はなぜ義務なのでしょうか?

工事請負契約書とは、工事の受注者と発注者のあいだで交わされる契約です。契約は建設業法で書面で作成することが義務付けられております。見積書の作成のみで、ファックス、メール等での受発注は契約書を作成したことになりません。契約内容をあらかじめ書面で明確にすることで、請負代金や施行範囲などに係る紛争を未然に防ぐことが目的です。契約を締結するにあたり、一定の重要事項を明示した適正な契約書を作成し、作成後は署名または記名押印して、相互に交付します。そして契約書には以下の内容を記載する義務があります。

【1】工事内容

【2】請負代金の額

【3】工事着手の時期および工事完成の時期

【4】工事を施工しない日または時間帯の定めをするときはその内容

【5】請負代金の全部または一部の前払金または出来形部分に対する支払いの定めをするときは、その支払いの時期及び方法

【6】当事者の一方から設計変更または工事着手の延期もしくは工事の全部もしくは一部の中止の申出があった場合における工期の変更、請負代金の額の変更または損害の負担およびそれらの額の算定方法に関する定め

【7】天災その他不可抗力による工期の変更または損害の負担およびその額の算定方法に関する定め

【8】価格等の変動もしくは変更に基づく請負代金の額または工事内容の変更

【9】工事の施工により第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担に関する定め

【10】注文者が工事に使用する資材を提供し、または建設機械その他の機械を貸与するときは、その内容及び方法に関する定め

【11】注文者が工事の全部または一部の完成を確認するための検査の時期および方法並びに引渡しの時期

【12】工事完成後における請負代金の支払いの時期および方法

【13】工事の目的物が種類または品質に関して契約の内容に適合しない場合におけるその不適合を担保すべき責任または当該責任の履行に関して講ずべき保証保険契約の締結その他の措置に関する定めをするときは、その内容

【14】各当事者の履行の遅延その他債務の不履行の場合における遅延利息、違約金その他の損害金

【15】契約に関する紛争の解決方法

 

建設リサイクル法対象工事の場合は、以下の4項目を書面で記載します。

【1】分別解体の方法

【2】解体工事に要する費用

【3】再資源化するための施設の名称及び所在地

【4】再資源化等に要する費用

 

書面での契約締結方法は、公共工事・民間工事ともに契約内容を以下のいずれかの書面で作成します。

【1】請負契約書

【2】注文書・請書 + 基本契約書

【3】注文書・請書 + 基本契約約款

 

著しく短い工期の禁止について

建設業就業者の長時間労働を是正するためには、適正な工期設定を行う必要があります。建設工事の注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結することは禁止されています。

短い工期と長時間労働には相関関係があります。令和6年4月からは建設業についても、「時間外労働時間の上限規制」の適用を受けるため、上限規制以上の時間外労働は労働基準法違反となります。

※災害時の復旧・復興事業は除きます(令和6年4月1日~)

※上限規制を上回る違法な時間外労働時間を前提として設定される工期は、たとえ元請負人と下請負人との間で合意をしていたとしても「著しく短い工期」と判断がされます。(令和6年4月1日~)

 

著しく短い工期の判断材料について

■見積依頼の際に元請負人が下請負人に示した条件
■締結された請負契約の内容
■下請負人が「著しく短い工期」と認識する考え方
■過去の同種類似工事の実績
■下請負人が元請負人に提出した見積もりの内容
■当該工期を前提として請負契約を締結した事情
■当該工期に関する元請負人の考え方
■賃金台帳、等

 

著しく短い工期の判断の視点について

【1】契約締結された工期が、「工期基準」で示された内容を踏まえていないため短くなり、それにより下請負人が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該下請工事を施工することになっていないか。

【2】契約締結された工期が、過去の同種類似工事の工期と比較して短くなることにより、下請負人が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該下請工事を施工することになっていないか。

【3】契約締結された工期が、下請負人が見積書で示した工期と比較して短い場合、それにより下請負人が違法な長時間労働などの不適正な状態で当該下請工事を施工することになっていないか。

 

工期の変更が必要となる場合にも適用されます

「著しく短い工期」の禁止は、当初の契約締結後、当初の契約どおり工事が進行しなかったり、工事内容に変更が生じた際、工期を変更するために変更契約を締結する場合についても適用されます。

 

著しく短い工期の禁止に違反した場合の措置について

国土交通大臣等は、著しく短い工期で締結をした発注者に対して、勧告を行うことができ、従わない場合にはその旨を公表することができます。建設工事の注文者が建設業者である場合は、勧告や指示処分を行います。

 

下請け代金の適正な支払いについて

下請代金が適正に支払われないと下請負人の経営の安定性が損なわれるばかりでなく、ひいてはそれが手抜き工事、労災事故等を誘発し、建設工事の適正な施工の確保が困難になりかねません。

建設業法では、工事の適正な施工と下請負人の利益保護を目的として下請代金の支払いに関する規定を設けています。

① 注文者から請負代金の出来形部分に対する支払い、または工事完成後における支払いを受けたときは、その支払対象となった工事を施工した下請負人に対して、相当する下請代金を1ヶ月以内で、かつ、できる限り短い期間内に支払わなければなりません。

② 下請代金のうち労務費に相当する部分については、現金で支払うよう適切な配慮をしなければなりません。手形で支払う場合においても、手形期間は120日以内で、できるだけ短い期間としましょう。

③ 元請負人は、前払金の支払いを受けたときは、下請負人に対して資材の購入、労働者の募集その他建設工事の着手に必要な費用を前払金として支払うよう配慮しなければなりません。

建設工事では発注者から資材の購入や労働者の募集等建設工事の着手のために必要な準備金が前払金として支払われることがありますが、このような資材購入等の準備行為は元請負人だけでなく下請負人によって行われることも多いので、元請負人が前払金の支払いを受けたときは下請負人に対しても工事着手に必要な費用を前払金として支払うよう努めるべきこととしています。

④ 下請工事の完成を確認するための検査は、下請負人から工事完成の通知を受けた日から20日以内に行い、かつ、完成検査後に下請負人が工事の目的物の引き渡しを申し出たときは直ちに引き渡しを受けなければなりません。

下請負人からの「工事完成の通知」や「引き渡しの申出」は口頭でも足りますが、後日の紛争を避けるため、書面で行うようにしましょう。

⑤ 特定建設業者は下請負人(特定建設業者または資本金が4,000万円以上の法人を除く)からの工事の目的物の引渡し申出日から起算して50日以内に下請代金を支払わなければなりません。

赤伝処理を行う場合は、元請負人と下請負人双方の協議・合意が必要です。下請代金の支払いに際して、安全衛生費や建設廃棄物の処理費用を下請代金から差し引く場合にはその内容を見積条件や契約書面に明示するようにしましょう。

※特定建設業者は、元請としての義務①と特定建設業者⑤の両方の義務を負うので、出来形払いや完成払いを受けた日から1ヶ月以内か、引渡しの申出から50日以内の支払い期日(支払期日の定めがなければ引渡し申出日)のいずれか早いほうで支払わなければなりません。

 

建設業許可について

建設工事を請け負う建設業の方は「建設工事の種類に対応した建設業許可」が必要です。ただし、軽微な建設工事のみを請け負う場合は建設業許可は必要ありません。

関連記事 建設業許可についての詳しい解説はこちら

 

建設業許可が必要のない「軽微な工事」とは?

【建築一式工事の場合】

下記の①②いずれかに該当する建設工事

①工事1件の請負代金の額※が1,500万円未満の建設工事
②延べ面積が、150㎡(45.38坪)未満の木造住宅工事

 

【建築一式工事以外の場合】

 工事1件の請負代金額※が、500万円未満の建設工事

※「請負金額の額」とは、消費税及び地方消費税相当額を含んだ金額(以下「税込み」)をいいます。

 

一般建設業許可が必要な工事

原則:一件の請負契約金額が500万円以上となる工事

例外:500万円以上でも、元請で延べ床面積150㎡未満の木造住宅または請負金額が1,500万円未満の新築または増築工事(建築一式工事)は不要

 

特定建設業許可が必要な工事

発注者から直接請け負う1件の工事について、その工事の全部又は一部を下請代金の合計額が税込み4,500万円以上(建築一式工事の場合は税込み7,000万円以上)となる下請契約を締結して施工しようとする場合に必要となります。

~注意点~

・下請契約が2以上ある場合は、その合計額
・元請負人が提供する材料等の価格は含みません

 

ご不明の点、もっと詳しく知りたい点などありましたらお気軽にご連絡ください。 

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この記事を書いた人

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塩﨑 宏晃

2003年行政書士登録。
建設業許可・経営審査業務の実務経験19年。
行政書士業務を通じて現場で働く方の縁の下の力持ちとなることがモットーです。
近年は建設キャリアアップシステム、特定技能ビザにも取り組んでいます。
お客様は一人親方、サブコン、地方ゼネコン、上場メーカーなど様々。
毎年200社以上のお客様と直接お会いし、ご相談を承っています。
2023年から申請のオンライン化が本格スタートしますので、
これを機に遠方のお客様ともご縁を頂ければと考えております。