総合評定値(P点)を向上させるための“経営状況(Y点)を良くする取り組み”

経営規模等審査(経審)の点数は次のような計算式で求められます。
総合評定値 P=0.25X1 +0.15X2 +0.2Y+0.25Z+0.15W
 

このうち今回は経営状況(Y点)を改善する方法について解説をしていきます。Y点は俗に「倒産しない会社かどうかを見極める評価」とも言われています。倒産しない会社、というとどのように定義できそうですか?お金回りがよく、借金が少なく、現金に余裕のある会社ですね。人間に例えれば、贅肉のない、筋肉質の会社です。Y点は比較的規模が小さく、歴史の浅い会社でも高得点を出すことができます。それでは具体的に解説していきましょう。

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【経営状況分析(Y 点)を改善するための取り組み】


【1】純支払利息比率について
・純支払利息比率の計算式
・経営状況(Y 点)の評点に影響する純支払利息比率
・営業外の費用額で借金の負担がわかります
・経審対策の事例:銀行借入があるお客様の場合
・損益計算書の勘定科目「雑収入」を確認


【2】負債回転期間について
・決算期末に完成していない工事の経理処理
・貸借対照表の科目
・未成工事の支出金と受入金
・流動負債と固定負債の合計額が Y 点に影響する
・負債回転期間の計算式
・流動負債と固定負債の科目
・負債回転期間についてのまとめ


【3】利益額について
・利益額の種類
・利益額に関係する Y 点の指標
・総資本売上総利益率
・売上高経常利益率
・利益額についてのまとめ

【4】資本とは
・特定建設業許可の財務要件
・自己資本に関する Y 点の指標
・自己資本対固定資産比率
・自己資本比率
・資本についてのまとめ

 

純支払利息比率について

純支払利息比率の計算式

Y 点への寄与度は、最大で 29.9%であり、中小零細企業にとって最も重要な指標です。この指
標では、数値が小さいほど高得点となります。
(支払利息-受取利息配当金)/売上高×100

経営状況(Y 点)の評点に影響する純支払利息比率

経営状況は、「堅実な」会社を見つけるための手段です。会社が多額の利息を支払ってい
る場合、その分利益を圧迫し、経営に負担をかけます。しかし、金融機関に支払う利息があっ
ても、逆に配当金収入で差額がプラスになれば、非常に良い点数を獲得できます。

営業外の費用額で借金の負担がわかります

支払利息は営業上の稼ぎである経常利益から引かれる営業外の費用であり、営業外の利益によ
って帳消しにできます。重要なのは、経営を圧迫する営業外損益が相対的にどれだけあるかを
評価することです。

経審対策の事例:銀行借入があるお客様の場合

あるお客様の事例では、金融機関からの借入による支払利息があるにも関わらず、純支払利息
比率が良好でした。この理由は、受取利息配当金によって支払利息が相殺されたためです。会
社名義で株式を運用すること自体が良いかどうかは別として、結果、受取利息配当金によって
営業外費用が相殺されることは、経審対策のひとつと言えます。

損益計算書の勘定科目「雑収入」を確認

受取利息があるはずなのに支払利息との相殺がされていない場合もあり得ます。受け取るべき
利息との相殺がされていない場合、雑収入として計上される可能性があります。この場合、正
確な受取利息配当金として計上するためには、事前に顧問税理士の先生に相談し、会計処理を
修正する必要があります。

 

 

負債回転期間について

決算期末に完成していない工事の経理処理

建設業においては、通常、工事完成基準が広く採用されており、工事が完了した時点で売上高
と費用を計上します。未完成の工事に関する項目である「未成工事」が貸借対照表に存在し、
工事が完了するまでに支払った費用を含めて記録します。そして、工事が完成した時点で実際
の収支を計算し、正確な収益を算出することができます。

貸借対照表の科目

・完成工事未収入金(資産):完成工事高に計上した請負金額のうち、未だ回収できていない
もの
・未成工事支出金(資産):完成工事高に計上していない工事について支出した費用
・工事未払金(負債):完成工事高に計上した工事に支出した費用のうち、支払いが済んでい
ないもの
・未成工事受入金(負債):完成工事高に計上していない請負金額のうち、先に受領したもの

未成工事の支出金と受入金

貸借対照表の未成工事支出金に入れた支出は、決算期中に費用にならず、現場が完成工事とし
て処理された時に費用に振り替えられます。同様に、貸借対照表の未成工事受入金に入れた収
入も、決算期中には完成工事高や費用にはならず、現場が完成工事として処理された時に振り
替えられます。建設業では、決算期をまたいで仕事が完了することがよくあるため、このよう
な勘定科目が必要になるということです。

流動負債と固定負債の合計額が Y 点に影響する

経営審査にあたり、未成工事についての受け入れ金は流動負債に該当するため、経営状況
(Y 点)の結果にマイナスの影響を及ぼします。Y 点には負債回転期間という評価項目があり
ます。つまり、「何か月分の売り上げで借金を返済できるか」ということを評価する項目です。

負債回転期間の計算式

(流動負債+固定負債)÷売上高÷12
負債回転期間という指標は、企業の返済能力を評価するために用いられます。これは、負債の
合計額を年間の総売り上げで割った金額を月単位で計算することによって、企業が借入金を返
済できる期間を算出するものです。この指標を用いることで、企業の返済能力や財務状態を分
析することができます。

流動負債と固定負債の科目

(流動負債)
・支払手形
・工事未払金
・短期借入金
・未払金
・未払費用
・未成工事受入金


(固定負債)
・社債
・長期借入金
・リース債務
・退職給与引当金

負債回転期間についてのまとめ

負債回転期間の計算においては、未成工事受入金は金融機関からの借入金と同様に扱われ、数
字が少ない方が評価が高くなるため、健全な会社と見なされます。決算日の間に金融機関の借
入は一度返済し、未成工事の計上はできるだけ残さないようにすることが、経審の点数を上げ
るための方策とされます。決算前に対策を検討することが重要です。

 

 

利益額について

利益額の種類

「利益額」という言葉には複数の意味があります。
損益計算書の構成を上から順番に単純化して並べてみます。
売上高
売上原価
→売上総利益(※1)
販売費および一般管理費
→営業利益(※2)
営業外損益
→経常利益(※3)
特別損益
→税引前利益(※4)
税金
→当期純利益(※5)
※1 売上総利益
売上高から現場で直接かかった経費である工事原価を引いた金額、いわゆる粗利です。原価割
れしてしまう工事があると、その工事は利益を生み出せていないため、問題視されます。売上
高には、完成工事高とそれ以外の事業の売上高(兼業売上高)が含まれます。
※2 営業利益
売上総利益から間接的な経費である販売費や一般管理費を引いたものです。ここで利益が出て
いないということは「会社の本来の事業としては儲けが出ていない」ということになります。
※3 経常利益
営業利益から事業以外の活動で生じた損益を差し引いた金額です。(利息、配当金、雑収入等)
会社によっては、ここでようやくプラスになることがあります。事業活動以外の利益ですので
手放しで喜べませんが、実はこの部分の利益が経営状況(Y点)の評価指標のひとつであ
る、純支払利息利益率に好影響を与えます。
※4 税引き前利益
経常利益から、通常の事業活動や投資活動以外で発生した偶発的な損益を差し引いた金額です。
(例:不動産を売却して得た利益や、法人税の還付金、訴訟費用の支払いなどが含まれます。)
※5 当期純利益
税引き前利益から税金を差し引いた金額が当期純利益となりますが、借り入れがある場合は元
金の返済は経費にあたらず、当期純利益から支払うことになります。このため、利益があるの
にお金が手元に残らない場合があります。これが一つの原因であり、借入は大きなダメージを
与えることになるため、注意が必要です。

利益額に関係するY点の指標

利益額に関する経営状況分析(Y 点)のふたつの評価指標をみてみます。
X3 総資本売上総利益率:売上総利益÷総資本(2 期平均)×100
X4 売上高経常利益率:経常利益÷売上高×100

総資本売上総利益率

総資本額に対する売上総利益の割合を示す指標で、会社の利益を出す効率の良さを計るもので
す。ただし、粗利益であることに注意し、原価管理の重要性が強調されます。

売上高経営利益率

事業活動での利益を売上高に対して計った指標で、収益性を計るものです。臨時的な収益を除
いたもので、販売費や一般管理費によって左右されます。無駄遣いがないか見直しをし、経費
削減を行うことで改善できます。場合によっては役員報酬の見直しが必要です。

利益額についてのまとめ

ひとくちに利益額といっても、損益計算書の構成のなかで意味する内容と、それを改善するた
めに打つ手も異なります。経営状況(Y 点)でいえば、売上総利益と経常利益のふたつが対象
です。経営規模(X 点)でいえば、営業利益(+減価償却費)が対象です。改善の対象とする
利益額を明確にして検討を重ねていくことが重要になります。

 

 

自己資本について

資本とは

貸借対照表は、資産、負債、資本の 3 つで構成されています。自己資本は、資産から負債を除
いた金額であり、会社が保有する他人の資本によらない自由な財産です。自己資本比率が高い
ほど、会社の財務内容が健全であるとされています。自己資本の充実度合いは、特定建設業許
可を新規で取得、許可を更新する申請の際にも審査の対象になります。

特定建設業許可の財務要件

1.流動比率 75%以上
2.欠損の額 資本の額の 20%以内
3.資本金の額 2,000 万円以上
4.自己資本の額 4,000 万円以上

自己資本に関する Y 点の指標

経審の経営状況分析(Y 点)では財務健全性についてふたつの評価指標があります。
X5:自己資本対固定資産比率:自己資本÷固定資産×100
X6:自己資本比率:自己資本÷総資本×100

自己資本対固定資産比率

固定資産の総額に占める自己資本の割合を示します。
建設業には事業継続に欠かせない固定資産、ユンボなどの建設機械、トラックなどの車両があ
ります。経審では建設機械を保有することを社会性等(W 点)で評価する一方、その固定資産
をどのようにして取得したのかにより経営状況分析(Y 点)で評価をします。他人の資本(金
融機関からの借入等)で取得していると評価が下がることになります。

自己資本比率

自己資本そのものが総資本に占める割合を示します。金融機関からの借入に頼った経営をして
いる場合、自己資本比率は下がります。一般に顧問税理士さんからも厳しく指導される点では
ないでしょうか。

資本についてのまとめ

倒産のリスクが少ない会社を目指すと、自己資本比率が高くなります。反面、チャンスがある
時に思い切った投資ができなければ、大きな成長は望めません。このあたりは「成長か?それ
とも安定か?」という経営方針の優先順位に拠ると思います。一概にどちらが良いとも言えま
せん。トップの価値観が反映されると思います。

 

 

まとめ

以上、今回は経営規模等審査(経審)のうち経営状況(Y点)を改善する方法について解説をしました。Y点が高いということは、倒産の心配が少ない、安定した経営ができている会社です。従業員様、取引先様に安心を与えられる会社を目指して日々の改善に取り組んでいただければと思います。そしてY点を改善することにより総合評定値のP点を向上させることができます。

関連記事 総合評定値(P点)を算出するための経営状況(Y点)について

 

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この記事を書いた人

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塩﨑 宏晃

2003年行政書士登録。
建設業許可・経営審査業務の実務経験19年。
行政書士業務を通じて現場で働く方の縁の下の力持ちとなることがモットーです。
近年は建設キャリアアップシステム、特定技能ビザにも取り組んでいます。
お客様は一人親方、サブコン、地方ゼネコン、上場メーカーなど様々。
毎年200社以上のお客様と直接お会いし、ご相談を承っています。
2023年から申請のオンライン化が本格スタートしますので、
これを機に遠方のお客様ともご縁を頂ければと考えております。