
本日はY点についての解説をしていきますが、その前に経審の全体像について少しおさらいをしましょう。

経営事項審査とは、公共工事への入札参加を希望する建設業者が、審査基準日(通常は決算日)現在の自社の経営状態や経営規模について、客観的な審査を受けることです。経営事項審査では、建設業者の「完成工事高評点(X1)」「自己資本額・平均利益額評点(X2)」「経営状況(Y)」「技術力評点(Z)」「その他社会性等評点(W)」を基に、総合評定値(P点)が算出されます。

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審査項目について
P点 総合評定値について
経審の評価点数であるP点は、X1点、X2点、Y点、Z点、W点の合計点数ですが、それらを単純に足し合わせたり平均値を取ったりするのではありません。実際には、以下のような配分方法で総合的な評価点が算出されます。
計算式:総合評定値(P)=0.25(X1)+0.15(X2)+0.2(Y)+0.25(Z)+0.15(W)(小数点以下、四捨五入)
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X1点 経営規模について
経審の評価において、完成工事高の規模を評価する項目では、金額が大きいほど高く評価されます。業種によって異なりますが、経審を受ける業種ごとに元請完成工事高と下請完成工事高の合計額で評価が行われます。完成工事高は、単年度ではなく直近2年間または3年間の平均値を選択することができます。
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X2点 経営規模について
自己資本額と利益額は金額が大きいほど高く評価されます。自己資本額は、貸借対象表の自己資本額です。自己資本額は単年度または2年平均を選択できますが、利益額は2年平均のみです。
Y点 経営状況について
経営状況の評価項目は、決算書の内容を基に行われます。この評価では、規模の大きさよりも、企業の身軽さ(倒産のリスクが低いこと)が高く評価されます。純支払利息比率: 売上に対する利息負担額の割合を示す指標です。この比率が低いほど、企業の負債への負担が軽いことを示し、身軽さが高く評価されます。純支払利息比率(売上に対する利息負担額の割合)、負債回転期間(負債の合計額が売上げの何か月分か)ほか全部で8項目があります。
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Z点 技術力について
技術力の評価項目では、有資格者の数と元請完成工事高が大きいことを高く評価します。有資格者の多さや高額な元請完成工事高は、技術力の高さと信頼性を示す要素となります。経審を受ける業種によって技術職員数と元請完成工事高を集計します。
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W点 社会性等について
社会性の評価項目では、法令遵守と国の施策への積極的な取り組みが評価されます。法令違反があると減点されますが、技術者や技能者の確保・育成、災害時の対応、環境への配慮などの施策に積極的に取り組むことで加点されます。取り組む項目ごとに加点され、より積極的な取り組みが高い評価となります。評価は各項目の取り組み度合いに基づいて行われます。
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W点についての詳しい解説
W点で評価される退職金制度と法定外労災制度について

経営状況(Y点)について
YY点は「経営状況」を表すもので、経営状況分析機関が決算書などの内容をもとに審査を行います。経営状況は次の4つの観点から分析され、合計8つの指標(X1~X8)で評価されます。 ※このX1~X8は、経営規模(P点)のX点とは異なります。
「負債抵抗力」とは、建設業者の負債に対する安定性を評価する指標です。具体的には、有利子負債の期中平均残高や借入利率、負債の支払能力などが考慮されます。負債抵抗力が高い建設業者は、負債返済に安定性があり、経営の安定性も高く評価されます。経営状況評点の算出にも影響を与える重要な要素となります。
「収益性・効率性」とは、企業が資本をどれだけ効率的に活用して利益を上げているかを評価する指標です。具体的には、企業の経常的な活動によって得られる収入(売上高)と、その収入に対してどれだけ効率的に利益を上げているかが考慮されます。
「財務健全性」とは、企業の資金調達の健全性を評価する指標です。これは、企業が持つ資金状況や負債の適正性、流動性などを考慮して判断されます。財務健全性が高い企業は、十分な資金を確保し、債務を適切に管理していることを示しています。これにより、企業は経済的な安定性を保ちながら事業活動を継続し、将来の成長に向けての基盤を築くことができます。財務健全性は経営状況評点の算出においても重要な要素となります。
「絶対的力量」とは、企業活動によって生じた現金の量やその蓄積を絶対的な金額で表したものです。この指標は企業の規模に応じて評価することができます。絶対的力量が高い企業は、多額の現金を保有し、経済的な強さや安定性を示すことができます。この指標は企業の財務状態や資本の使い方に関する評価に役立ちます。絶対的力量は経営状況評点の算出において重要な要素の一つです。

経営状況(Y点)の算出方法
X1 純支払利息比率
(支払利息-受取利息配当金)÷売上高×100
→ 借入金の利息負担の大きさを示します。数字は小さいほうがよい。
Y点への寄与度:29.9%
X2 負債回転期間
(流動負債+固定負債)÷(売上高÷12)
→ 負債をどの程度の期間で返済できるかを示します。数字は小さいほうがよい。
Y点への寄与度:11.4%
X3 総資本売上総利益率
売上総利益÷総資本(2期平均)×100
→ 総資本をどれだけ効率的に使って利益を出しているかを示します。数字は大きいほうがよい。
Y点への寄与度:21.4%
X4 売上高経常利益率
経常利益÷売上高×100
→ 売上に対してどれだけの利益を上げているかを示します。数字は大きいほうがよい。
Y点への寄与度:5.7%
X5 自己資本対固定資産比率
自己資本÷固定資産×100→ 固定資産がどの程度自己資本で賄われているかを示します。数字は大きいほうがよい。
Y点への寄与度:6.8%
X6 自己資本比率
自己資本÷総資本×100
→ 総資本のうち自己資本が占める割合を示します。数字は大きいほうがよい。
Y点への寄与度:14.6%
X7 営業キャッシュフロー
営業キャッシュフロー÷1憶(2年平均)
→ 本業でどれだけ現金を生み出しているかを示します。数字は大きいほうがよい。
Y点への寄与度:5.7%
X8 利益剰余金
利益剰余金÷1憶
→ これまでの事業活動でどれだけ利益を蓄積しているかを示します。数字は大きいほうがよい。
Y点への寄与度:4.4%

経営状況(Y点)の計算方法
経営状況(Y点)は、まず8つの財務指標(X1~X8)を数値化し、それらをもとに「経営状況点数A」を算出します。
その後、Aの数値を用いて最終的なY評点が求められます。
① 経営状況点数Aの計算式
以下の式に、X1~X8で求めた指数を当てはめます。
-0.4650×(X1) -0.0508×(X2) +0.0264×(X3) +0.0277×(X4)
+0.0011×(X5) +0.0089×(X6) +0.0818×(X7) +0.0172×(X8) +0.1906
= 経営状況点数A
※小数点以下第3位を四捨五入します。
② Y評点の計算式
次に、上記で求めた経営状況点数Aを下記の式に当てはめます。
167.3 × 経営状況点数A + 583 = Y評点
※小数点以下第1位を四捨五入
※Y評点の範囲は0点~1,595点
このY評点が高いほど、企業の経営状況が健全であると評価されます。

経営状況(Y点)を高めるためのポイント
Y点は、「倒産のリスクが小さい、安定した会社ほど高く評価される」仕組みになっています。そのため、Y点を上げるためには 財務体質の健全化 が重要です。中でも「利益をしっかり確保し、自己資金を増やして借入に頼らない経営」を目指すことが理想的です。財務の健全化がカギになります。とくに「利益の徹底追及と自己資金比率アップによる無借金経営」が最も理想的な方法です。具体的には次のような経営努力をすると改善が見込めます。具体的な改善のポイントは次のとおりです。
1.支払利息を減らす
2.受取利息をきちんと計上する
3.借入金をできるだけ早めに返済する
4.利益率を上げるために、受注単価や原価の見直しを行う
5.事業に直接関係しない固定資産を整理する
6.役員からの貸付金などを資本金に振り替えて、自己資本を増やす

経営事項審査のY評点は登録分析機関が算出
経営事項審査(経審)のY評点は、国土交通大臣の登録を受けた経営状況分析機関が算出します。企業の自己申告ではなく、分析機関による「Y評点通知書」の提出が必要です。全国10カ所の登録分析機関のいずれに依頼しても、結果は同じになります。申請時には、申請書類と対象事業年度の財務諸表を提出します。
登録経営状況分析機関
・(一財)建設業情報管理センター 03-5565-6131
・(株)マネージメント・データ・リサーチ 096-278-8330
・ワイズ公共データシステム(株) 026-232-1145
・(株)九州経営情報分析センター 095-811-1477
・(株)北海道経営情報センター 011-820-6111
・(株)ネットコア 028-649-0111
・(株)経営状況分析センター 03-5753-1588
・経営状況分析センター西日本(株) 0836-38-3781
・(株)NKB 093-982-3800
・(株)建設業経営情報分析センター 042-505-7533
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料金目安:15万円~20万円
※業種の数、完成工事高、兼業事業の状況、従業員数などにより作業量が変動するため、ヒアリング後にお見積りいたします。
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